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From a disrance イスラエル・パレスチナの旅

バスの乗客の半数は兵役中の10代から二十歳そこそこの若者たち。肩にはライフル銃をぶら下げて手にはスマホ。かなりのイケメン、美人ばかり。そんな彼らとバスを共にして、イスラエル南部の街ベエルシェバからさらに南下。紅海の北・アカバ湾を臨むエイラートに向かう。

 

砂漠の向こう側、西に50キロ弱も行けば多くの問題を抱えているパレスチナ自治区のガザがある。でも今バスが走っているこの場所は、私が感じる限りにおいてはすごく平和で治安もいい。1時間弱走った先でドンパチやっている感じはない。

バスはでUSBを繋いで充電をできるようになっているので、みんなスマホを接続して充電中

 

今回のイスラエル・パレスチナ旅行は全日程10日ほどで、この時はもう終盤。南下する前の1週間はエルサレムを拠点にし、パレスチナの街などを日帰りで訪れたりしていた。

 

私が旅行をしたこのころは、イスラエルの国会がヨルダン川西岸地区に無許可で建てられたユダヤ人入植地に対して建設を合法化する法案を可決。トランプ大統領がイスラエルの首相と会談予定という少し前。アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムにお引越しようかしら、さらには入植地の問題に関し、これまでオバマさんが出していた見解とは違う声明を発表した、と話題になっていた。

 

そんな中、私もこの短い間にいろいろ考えたし、勉強した。

 

前回の旅はイランだった。もう数年前になる。イランの次にイスラエルに行くというのは、あらゆる場所のパスポートチェックで不審がられるという、なかなか面白い体験だった。同時に中東の問題について身近に感じることができる機会にもなった。

 

正直なところ、中東の問題とか、パレスチナ問題とか、ぼんやりしか知らない。なんか危なくてヤバい場所なんだよね、って。高校の時には世界史をとっていたのに、カタカナとか年号とか全然覚えられず、そもそも授業をサボってたってのもあり、当然学んでいるはずの中東問題、そこまでに至る歴史なんかほとんど記憶にない。

 

イギリスの三枚舌外交っていうのも、なんかやらかしたんだよね、くらい。今回現地を旅して、あらためて少しずつだけど勉強してみて、今、日常生活の受け身で手に入る情報から表面で目に見えている問題だけに気を取られていると、大きく間違えるぞ、って怖くなった。

きっと平均的な日本人は私のように、いろいろ複雑で大変な場所というくらいの認識でいるのでは、と思うけど、私が際立って知らないということもあるのかな。レベルが低くて申し訳ないけれど、私がバックパックを背負ってどこかに行く理由でもある。学校の歴史には興味が持てないけれど、現地に行っていろんな人から話を聞いて、そこでフムフムと自分なりに思うところからスタートすることで、やっと興味がもてる。

 

そこで出会うひとりひとりから話を聞くと、大きな歴史の流れやこの時代と日常がつながっていることが分かる。まあ人間がやっていることだから、当然と言えば当然だけど、特に、イスラエル、パレスチナでは、どちらの地域でもこのことを深く考える。

 

バスの中で今回の旅で初めてiPodを取り出した。小さな画面をスクロールして、何を聞こうか考えて、結局、今までの人生で何百回も聞いた、ベッド・ミドラーのベストを選ぶ。

 

窓からの景色はひたすら広大な砂漠。イスラエルは四国と同じくらいの面積だそうだけど、日本人である私が考える「人が住みやすそうな土地」の広さは、このイスラエルでは少ない気がする。砂漠で暮らすって考えただけでも大変そうだ。それでもここに暮らす人たちにとって遥か昔からこの土地は大切な場所。

 

そんな砂漠の途中、周囲を見渡しても何もない場所にバス停が時々あって、兵隊さんたちがポツリポツリとバスを降りる。彼らはここで何をするんだろう?

道中はこんな景色が延々と続き、途中のバス停で時々人が降りて行く
ベッド・ミドラーがFrom a distanceを歌い始める。

 

遠くからみると この世界は青と緑

銃も爆弾も病気も飢えもない

遠くからみると この世界はハーモニーに包まれている

遠くからみると 戦争中でもあなたが友達に見えるし

この戦争が何の為なのか説明できない

From a distance

 

この時代の日本人として旅をしている私は、この歌を聞いて人間のこの社会がそうあってくれたなら、と胸をキュンとさせることが出来る。ユダヤ人と話していても、パレスチナ人と話していても、誰と話していても、ある例外をのぞけば多くの人たちは親切でフレンドリーだ。私は日本から来た遠くの人。きれいごとも言える。

 

でもこの土地に足をつけて日々生活をしている人たち、日常において、隣に座っている人が銃を身につけているこの場所で、彼らはほんの少しだけジャンプできるかもしれないけれど、そこでのハーモニーは不安を奏でている。

 

エルサレムの安宿のドミトリーで同室になったカナダ人がいた。もう還暦を過ぎた銀髪の美しい初老の女性。彼女は大学時代をエルサレムで過ごしたそうで、当時のエルサレムの様子をいろいろ語ってくれた。

 

「あの頃の女性たちは、それぞれの民族衣装を身に纏い、自分の宗教に誇りを持ち、他宗教に対しても尊敬の念を持ち、堂々として格好良かった。パレスチナの女性が刺繍を施した民族衣装を着て胸を張って歩いている姿に、自分もあんな風になりたいと思ったのよ」

 

タブレットでパレスチナの女性の民族衣装を検索して、こんな感じよ、と見せてくれる。恰幅のいい女性が背筋をピンとのばして写真に写っている。

 

「今の人たちは、見た目には信仰心は少なくなったように見えるけれど、逆に信心深くなり、自分の宗教の中に閉じこもっていっているようにみえる。一体あの自信に満ちあふれた美しい女性たちはどこにいってしまったんだろう?」

 

彼女の話を聞いて、その時代のエルサレムを見てみたかった、と心から思った。

 

 

エイラット行きのバスが休憩の為に停車。砂漠のオアシスとも言えるその場所では、マクドナルドが営業をしていた。若き美しい兵隊さんたちはベンチに座ってスマホを取り出し、熱心に画面を眺めていた。軍服を着てライフルを持っている以外は、日本でもどこにでもある光景なんだけどな。

 

砂漠の途中のオアシスはマクドナルド

各自休憩中、乗客の半数以上は徴兵中の若者たち。彼らはバス代が安いそう

 

 

このあと私は無事にエイラットに到着し、人生初めての紅海を見た。そしてやることがなかったのでなんとなくエジプトとの国境を見に行った。帰り道、かつて新宿の路上で雑貨を売っていたイスラエル人ヒッピーのテントで、彼の仲間と一緒にビールをごちそうになって夕日を眺めることになった。空が赤くグラデーションになると、紅海の向こう側のヨルダンとサウジアラビアの夜景が美しく輝きはじめる。

 

このフェンスの向こう側はエジプト。ネコは国境越えにパスポートはいらない

 

紅海の夕べ。向こう側はヨルダンのアカバ、もっと向こうはサウジアラビア

 

 

「この美しい景色があって、神様がいれば、僕はもう他に何にもいらない」

ヒッピーの彼は言った。

「仕事を見つけてちゃんと生活をしろよ」

仲間の一人が言った。

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