旅人文化ブログなんでも版

旅ってなんだ? 旅人ってどんな人?
よく分からないけど、旅って面白い!
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Nさん、ありがとうございました。

お世話になっていた人が亡くなった。
この方がいなければ、今のやどやは違うものだったか、あるいはなかったかもしれない。
2001年に準備をはじめ、2002年に一件目のやどやをオープン、その後半年くらいでもう一件。当時は現在の運営とは違いグレーなところでやっていた。はじめの半年は集客にインターネットさえ使っていなかった時代。
その頃はどうにか次の展開を考えていて、中野の不動産屋さんをあれこれ回っていた。ところが、20代半ばいくかどうかの小娘が外国人の住む家を探しているという、これだけですべて門前払いだった。お金もない、スキルもない。

そんな時に出会ったのが、Nさんだった。

今の社長の友人が、たまたまインターネットで社長をみつけて連絡。その友人の方とものすごく久しぶりに会うというところに同行させてもらった。今でも覚えている中野のニュー浅草だ。そこでそのときの事業の悩みを話し、その多分数日後だったか、新宿の西口のヨドバシカメラ前で馬面の男が待っているから相談しなさい、と​連絡をいただいた。

その馬面の男というのが亡くなったNさんだった。
あの新宿の雑踏の中で、Nさんはすぐに見つかった。近くにあった地下に下りて行く薄暗い喫茶店に入り、自己紹介も程々に、早速そのとき抱えていた問題をお話した。この喫茶店はこの間前を通った時にもまだあった。詳しい会話は覚えていないが、Nさんは私の話にじっと耳を傾け、内容を把握し、簡単に質問をし、少し考えて、「中野なら2人いるなぁ、ちょっと考えさせてね、連絡するから」と言い、要件が終わったらすぐに喫茶店を出て、じゃあっ!と手をすっとあげてスタスタと歩いて行ってしまった。この手をあげてあっという間に歩いて帰ってしまうのは、その後、お会いするたびに変わらなかった。

数日後、Nさんから、中野のサンクスのあるビルの4階に行きなさい。もう話はしてあるから、と連絡があった。この時紹介していただいた方にも、今でもとても気にかけていただいてお世話になりっぱなしだ。

そんなワケで、このとき紹介してもらう時はいつも、どこどこに行きなさい、話はしてある、という連続だった。私はそれが、なんだかいい加減な気もしながらカッコいいなと思っていた。今になって思えば、人を紹介するということ、それがどんなに大変なことなのかというのはよくよく分かる。バックパッカーあがりのこんな小娘の話を真剣に聞いて、面白いと言ってくれて、自分の大事な人たちを紹介して、その後も仕事のことをずっと気にかけてくれた。

それから数年後、Nさんがポルトガルに住んでいる時に1週間お世話になったことがある。奥様と一緒だったのだけど、たまたま用事で帰国されていて、2人で1週間過ごすことになった。
毎日いろいろなところへ連れて行ってくれて、朝から晩まで遊び尽くした。毎朝、朝ご飯も作ってくれて、大好きなファドを聴きに連れて行ってくれたり、ヨーロッパの最西端ロカ岬にも行った。博識でどこに行っても歴史や地理を教えてくれた。イワシも食べたし、臓物の煮込みハンバーガーを赤ワインで食べる立ち飲み屋にも行った。すごく素敵な靴屋に連れて行ってくれて、2足靴を買った。一足は履き潰してしまったけど、もう一足は大事にまだ履いている。
その間の交通費も何もかもは全て自分で払ったけれど、ファドとあるレストランだけはごちそうしてくれた。ここは僕が招待したいから、と言って。
バスでスリにあっちゃったり、地下鉄で集団スリに囲まれたりしたけど、なんか笑い話で終わった。
今、私の家の台所には、リスボンで買ったタイルが二枚飾ってある。

何故だか、そんなポルトガルの日々をこの間、ふと思い出していた。あの靴屋にまた行って、履き潰してしまった赤い靴を買いなおしたいなぁ。Nさんはお元気だろうか。連絡をしてみようかな。

その二日後、Nさんが亡くなったとの連絡が。
癌を患ったのちお会いした時に、今度いつお会いできるだろうかと思っていた。
お別れの会には小さな音でファドが流れていて、親しかった人たちだけに声をかけたということだったけれど、とてもたくさんの人が集っていた。
最後に奥さんが短い挨拶。
病院に行く前、亡くなる3日前、自宅でご家族に「楽しかったなぁ、楽しかったなぁ」と話していたそう。
手をあげて、どんどん歩いていく後ろ姿が思い浮かびます。
本当に、おつかれさまでした。そしてありがとうございました。
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