小雨の日の風景
傘をさす人とささない人が半々くらいのある日、中野駅南口。
私は傘をささずに駅からの交差点を渡ったところで、キャバクラか外国人パブのティッシュ配りのお兄ちゃんと目があった。
身長と短髪のおかげで夜だとかなりの確立で呼び込みやらに引っかかる私だけど、昼間はさすがに軽く口角を上げてみれば女だと分かってもらえる。テッシュを差し出す手が止まった。
そのテッシュ、私の前を歩いていた老夫婦のおじいさんが受け取っていたのをそっと見ていた。
おじいさんは受け取る瞬間にスピードをゆるめ、おばあさんの少し後ろを歩くことになった。おばあさんは何も気にせずに交差点で信号を待ち始める。おじいさんはそっとティッシュの広告に目をとめて、ハッとした顔をして少しだけ周りをキョロキョロ見渡した。その後、さっとそのテッシュをポケットに突っ込んで、信号待ちをするおばあさんの横に並んだ。
だがおじいさん、何やら緊張した様子。
ティッシュを入れたポケットから手を出せない。
おばあさんが何やらおじいさんに話しかける。雨のことでも話しているのか私には聞こえないけれど、おばあさんの表情はにこやかだ。
おじいさんは緊張しながらも笑顔で応対しているが、手とポケットは一体化してしまったように離れない。
信号が青に変わり、二人は横断歩道を傘をささずに一緒に歩いていった。
おじいさんがポケットから手を出すのは最後まで確認できなかったな。
日常を旅の気持ちで過ごすと、こんな風景にはよく出会います。
別になんてことないんだけど、いいなって。
久々の更新で、意味がないことを書いてみました。
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